「知る人ぞ知る」という表現がしっくりくるライブハウスが僕の生まれ育った茨城にふたつ存在していました。

ひとつは日立市LiveGarage常陸小川屋、もうひとつは水戸市90EAST。小川屋の方は2015年に惜しまれつつも閉店しましたが90EASTは現在も絶賛営業中で、地元のバンドマンや歌うたいから故遠藤ミチロウさんや竹原ピストルさん等、プロアマ問わずディープな奴等が集まるハコです。

2009年、僕は組んでいたバンドが解散して弾き語りを始めた頃にこのふたつのお店でたくさんライブをやらせてもらっていました。

このふたつのお店の特徴は何と言ってもガラの悪さ。90のマスターからは褒められた事なんて多分一度もないですし(でもたくさんライブやらせてくれました)、小川屋に至っては客も出演者もチンピラみたいな人しか来ません。演奏しても拍手なんてしてくれません。

当時の僕は歌もヘタクソギターもヘタクソ努力もしないプライドと承認欲求だけは人一倍っていうゴミみたいな存在で、どん底でただもがいているだけでした。毎回散々なライブをしてべろべろに酔っ払って帰ってヘコんでいました。

紆余曲折あって僕はスーパーアイラブユーの「ギタリスト」として活動する事になって「歌うたい」としての情熱は失われつつありました。(スーパーアイラブユーでの活動は本気でした。それは当時のライブを観てもらえれば絶対伝わる思います。)

でも2018年に真剣に考えてみたのです「歌って何だろう?」「歌うってどういう事だろう?」と。そしてどうしてももう一度歌に挑戦してみたくなりました。

バンドを脱退して歌うたいに戻った頃には小川屋はもう在りませんでした。

小川屋の常連の歌うたいと小川屋のマスターの企画で年に一度90EASTに何十組も歌うたいを集めて24時間ぶっ通しで歌い続けるイベントが開催されます。それが石の裏の虫祭り。僕もその一員に混ぜてもらって、歌ってきました。

相変わらずガラの悪いフロアの人達、PAブースでニヤニヤしている小川屋マスター小川さん、バーカウンターで腕組みして観てくれている90マスター。あの頃のゴミみたいな朝日駿はもういないハズっす、これが今の朝日駿ですって気持ちで歌いました。

何十年かかってでも「一流」になって戻ってきます。待ってて下さいって訳じゃないんですけど、勝手に一流になって戻って来ます。その時はまた観ててくれたら嬉しいです。よろしくっす。